「ネットゲームで朝陽をみるのは初めてだった。いつも明け方前にログアウトしてしまうから,朝陽はみたことなかった。田舎から上京してきて,初めてみた夕陽を思い出した。そう,なにも変わらない。だからここで,生活してみようと思った」。
quote:欧米では近ごろ,単調で骨の折れるネットゲームの作業を中国やロシアといったほかの地域に下請けに出しているゲーマーがいる。ある企業家はロシアの労働者たちに週およそ100ドルの基本給を払い,ゲーム内通貨を稼がせている。ロシアではかなり大きな金額だという。だが,通貨稼ぎのためにプレイしている労働者たちは現実世界での利益を得ているかもしれないが,ゲームを共有する態度に欠けるなどゲーム世界に不利益をもたらしていることもある。
「人間嫌いのボクが,なんでネットゲームなんてずっとやり続けているんだろう,と思った。もちろんネットでもあいさつは必要かもしれない。けれど,リアルのようなうそや欺瞞でしかないあいさつじゃないと感じる。リアルでは,ご無沙汰しています,毎日暑いですね,なんてどうでもいいことを礼儀正しく云っている自分が,途方もないうそつきに思えるが,ネットでは最低限必要なことであり,それだけですむ。ネットではざれ言や雑言も多いけど,もともと人間なんてそんなもんだと思っているから,気にならない。ボットやチートに出会うこともあるけど,リアルに比べたらたいしたことと思えないし,無視箱に登録すればもう姿もみないですむ。だから,ネットゲームは続けられる」。
「ボクは,リアルのためにワイヤードにいるのではない。ワイヤードでリアルのお金を稼ぐなんて,ムダだしつまんないし,ワイヤードでリアルの友だちを作るなんてのも,ムダだしつまんない。逆もまた真なりでリアルのお金はワイヤードで使うためにあるんぢゃないし,リアルの友だちもワイヤードで遊ぶためにいるんぢゃない。女性のキャラを使っているプレイヤーがネカマでも構わないし,男性のキャラを女性が使ってても構わない。リアルで会うことはないんだし,リアルのSEXのためにプレイしているわけでもない。リアルとワイヤードは,どちらかのためにあるんぢゃなく,それぞれ独立している。それが,ボクのネットゲームのやり方だ」。(refer to 「待つ」太宰治,『.hack//黄昏の腕輪伝説』依澄れい)
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